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ライパリアン.エフ. 〜ちゃこの日常〜

スキマワラシ

本の紹介はしないかも‥と書いたけど、ちょっとワクワクするような報告をもらってご機嫌になったワタシ✋。
前言撤回つーことで、最近読んだ本の一部を紹介。恩田陸さんの本からスタート♪


スキマワラシ恩田陸 著
とても不思議であたたかい物語。


「本当はいなくても、事実としてみんなが共有すれば、そいつは存在していることになる」と、太郎はスキマワラシについて説明した。これが物語の大きな主題となり、各所に散りばめられている。


散多は、両親の記憶があまりなかった。両親が亡くなってからも生活はほとんど変わらない。
太郎と仕事をするうち、人と人との記憶のあいまに棲みつくスキマワラシが姿を現しはじめる。
散多は、モノから記憶を感じ、また、兄や出会った人たちと過去の記憶を共有していくうちに、あいまいな記憶の両親が確かな存在となる。そして、姉弟になっていたかもしれないハナコとも出会った。


スキマワラシとはどういう存在だったのか、なぜ収集した種をハナコに渡したのか、太郎と散多、ハナコの関係はどうなっていくのか、不思議なままで物語は終わる。


でも、あるかもしれないと、というのと、あるんだ、というのとは全然違う。作中での太郎の言葉。スキマワラシが集めた種。本当に存在する種。それはきっと過去の欠片でできた種で、ハナコたちが未来で素敵に咲かせてくれる予感を感じられた。
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さざなみのよる木皿泉 著
ナスミの死後、彼女を取り巻く人々の思い出から、ナスミの人柄があたたかく伝わってくる。
悲しくて泣くのではなく共に生きた喜びで泣く、そんな人生っていいなと素直に思う。
生きることは、「続けッ!」なのだ。



奇譚蒐集録」清水朔 著
人、民族、国‥みな差異はある。比較して尊卑優劣をつける必要などない。


他の民族からは野蛮に思える風習も、そうならざるを得ない理由や歴史がある。簡単に否定することはできない。ただ、風習を維持することも、変化させることも、今、その文化に生きる人々が考えていくことが大事。



悪い夏」染井為人 著
生活保護制度を悪用する人々とケースワーカーが入り乱れて物語が進んでいく。ほんの少しの良心もすぐに負の方向へ巻き取られていってしまう。
ケースワーカーの守の結末が可哀想過ぎたかな‥。もう美空の名前さえ思い出せない。



隠蔽人類」 鳥飼否宇 著
ホモサピエンスと、遺伝的に別種の人類が存在する世界。ホモサピエンスを絶滅に追いやる別種の人類を殲滅、殺処分、個体数管理するなどなど乱暴な議論が連発する。荒唐無稽なのか、現代の人類が別種に対して当たり前に行っていることへの皮肉なのか。



そして、バトンは渡された瀬尾まいこ 著
様々な事情により、子供の頃に家族の形態が何度も変わる複雑な家庭環境で育つ優子。複雑な家庭環境というと不幸なイメージだが、本書では、優子と優子に愛情を注ぐ親たちとのほっこりした家庭が描かれている。母親の梨花さんについては、えっ!?って思わされる破天荒な決断も多かったけど‥^^;。
「親になるって、未来が二倍以上になること。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が、毎日やってくる。すごいよな」‥は印象的な言葉として残った。
バトンは次へ次へと渡されていったけど、これまでバトンを受け取った人たちは、その先を、未来を、ずーっと優しく見つめているんだろうな。



コンタミ科学汚染」 伊代原新 著
作中で疑似科学について丁寧に説明されている。
擬似科学商品を購入してしまう人はたくさんいる。それを愚かな行為と一言で片付けてしまうことはできない。それは心の拠り所であったりするからだ。
科学者であっても、悲しみや苦しみに押しつぶされそうになったら、理性の鎧を脱ぎ捨ててしまうこともある。
何かにすがりたいという気持ちは誰にでも起こり得ることなのだと思う。

科学は人を幸せにする営みではない、科学はときに絶望的な事実を平気でつきつける‥という宇賀神の言葉が印象的。



黄昏の岸暁の天小野不由美 著
李斎に助力を求められ、陽子たちは 泰麒を探す。
十二国における理に翻弄されつつ、結局は「人は自らを救うしかない」。
天をあてにせず、自らの手で戴国を救おうと立ち上がる 泰麒を応援したくなる。



わらう淑女」 中山七里 著
蒲生美智留に巧みに操られる人々は、見栄や欲にまみれて愚か。
美智留が、なぜこのような人々からお金をとったり、人生が転がり落ちていく様を眺めたりしているのか‥‥理由は分からないまま。空虚な悪女。



女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた東山彰良 著
モテない大学生の有象くんと無象くんが、健気でみっともないんだけど可愛らしい。
そして、男女の恋物語から、二人が得た教訓!?もクスッと笑える。
ひと思いにバッサリ‥‥、すくなくともそれほど嫌われてはいないということなのだ。



崩れる脳を抱きしめて」 知念実希人 著
伏線がうまく回収されていて良かった。
ミステリーの中に、研修医ウスイと患者ユカリの恋愛模様もあるのだが、2人の恋愛に関しては現実感が薄かったように思う。
むしろ、ウスイと冴子の関係がいい。多額の借金があるため打算的だったウスイを見守り、最後は自由に生きていいと背中を押してくれる冴子は間違いなく最高の女性です。



99%の誘拐」 岡嶋二人 著
父の手記から、慎吾は誘拐事件により父が失ったもの知り、新たな誘拐を計画する。
慎吾の感情や、父への想いはあまり語られない。しかし、模倣する様な緻密な誘拐、それを最初の誘拐犯の間宮に見せつけていく様から、慎吾の闇や孤独を感じた。



死体を買う男」 歌野晶午 著
江戸川乱歩萩原朔太郎が登場する探偵小説「白骨鬼」と、「白骨鬼」の完成原稿を作家細見辰時が入手するに至った経緯が描かれる。
細見が「白骨鬼」を無名の作家から買い取ろうとした時、過去の成功にすがる浅ましい行為だと思った。しかし、本当の理由を知った時‥‥、歌野晶午にやられたー!となりました。
タイトルの「死体を買う男」にも納得。
「白骨鬼」内では、塚本均であったのに塚本直となって生き残った細見。
現実では、潔く筆を折ったのではない‥臆病な作家として抜け殻のように生きていた細見。
「白骨鬼」を買い取ることで、本当の自分を取り戻すことができたのだろうか‥。










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