RIPARIAN.F.DOGS

ライパリアン.エフ. 〜ちゃこの日常〜

「愛なき世界」

「愛なき世界」
三浦しをん
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感想

感情も思考もないはずの植物が、人間よりも他者を受容し、飄々と生きているように見えるのに対し、何故?を分析し受け入れるために理性と知性が要求される植物研究者たちは、感情と思考に翻弄されている。そのコントラストが美しかった。
自分が一言が、友人の死の原因になったということを受け止めきれなかった若き日の松田教授。松田の心を救うために幽霊となり現れた友人を、疲れていた心身がみせた幻と理性では判断する。本村も、松田の過去の話を聞き、さすが「科学の鬼」と思ったが‥‥、語られなかった松田の姿‥、地下の顕微鏡室で声をあげて泣いた松田教授の中には、どのような感情が溢れていたのだろう。胸が苦しくなる一場面。


「愛なき世界」では、愛の対象も、形も多種多様な人々の心がつながりあう瞬間があった。
植物は光を糧に生きている。また、人間も、人々が発するほのかな光、希望に導かれて生きている。藤丸は、みな同じく愛ある世界を生きているという。
物語の最後まで、本村と藤丸の恋が成就することはなかった。‥が、なぜみんな光を生きる糧とするのか?本村さんが謎の一部を解き明かしてくれるかもしれないな‥そんな藤丸の最後の物思いにちょっぴりクスッとなった。
本村が、藤丸の発する温かな光に支えられていることに、それが愛だって気づいてくれますようにって。


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