RIPARIAN.F.DOGS

ライパリアン.エフ. 〜ちゃこの日常〜

きみはポラリス

『きみはポラリス三浦しをん
恋愛をテーマにした短編集。
なかでも『春太の毎日』がとても心に残った。
春太という名前の犬と飼い主の麻子のお話。春太は麻子をとても愛している。
泣いている麻子にぎゅっと抱きしめられた時の,春太の気持ちがとても切ない。

麻子の心臓は,俺のものよりずっとゆるやかに鼓動を刻む。命の速度がちがうからだ。俺はせつない。そして悲しい。麻子の悲しみを感じるのに,できることはあまりに少ない。

命の速度がちがう……ほんとそうだ。どう頑張っても犬達の命は私達より短い。
そして,私達が彼らのために何かしてあげられる時間も短く,多くのことをしてあげられないのかもしれない。


命の速度がちがっても,春太と麻子は家族として寄り添って生きている。
いずれは先に鼓動を刻み終えるであろうことを分かっていても,愛を注ぎ続ける春太。

どうしたって,俺は麻子よりも先に死んじゃうだろう。つらいことだが,こればっかりはしかたがない。だからといって俺は,麻子を愛することをおそれたりしない。命がつづくかぎり,麻子と一緒にいて,麻子を幸せにしてみせる。その自信がある。

俺のことを特別だと言ってくれて,いつだってとても大事にしてくれる麻子。そんな麻子は,俺がいなくなったらきっとひどく悲しむはずだ。いけないいけない。死んでからだって,俺のことで麻子が悲しむようなことがあっちゃいけないのだ。そんなことは,この俺の大きくて深い愛が許さないのだ。


麻子の恋人が「年を取って,お互いシモの世話とかするぐらいに長生きして,それで最後は『幸せだったね』って言えるような毎日を,一緒に送りたいと思っているんだ。」と決意を固めている傍で,「俺なんかすでに,毎日麻子にシモの世話をしてもらってるもんね。」と張り合う春太。こんな愛らしさを見せてくれたり,愛情をたくさん注ぎ続てくれる犬達に,私達人間はどう応えてあげることができるのか……考えさせられるお話でした。


ぜひ一読をおすすめしたい一冊。

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